ピラティス エルダー　Pilates Elder（長老たち）①

ジョーから直接指導を受けていたマスターティーチャーは何人かいました。直接指導されたティーチャーのことを「第一世代のエルダー」という場合があります。わざわざ「第一世代」とつくのは、彼らの多くが既に亡くなっている今、第一世代のエルダーに指導を受けたティーチャーたちが活躍していて、彼らが第二世代のエルダーと呼ばれるからです。今回はその第一世代のエルダーたちをご紹介します。

キャロラ・トリアー （Carola Trier, 1913-2000）

キャロラ・トリアーは1913年5月26日ドイツのフランクフルトで生まれたユダヤ人でした。コンサートダンサー志望で1924年にラバン・スクールに入学。1938年に第三帝国の台頭により両親がヨーロッパを離れる間、自身はフランスに滞在することになりました。1942年に5,000人以上のユダヤ人とともにフランスのグール収容所に送られましたが、アウシュビッツへの移送を逃れ、アメリカ渡航の申請が受理されました。

1950年に怪我を負い、ピラティスメソッドに出会いました。1950年代を通して、彼女はジョセフ・ピラティスとクララ・ピラティスの生徒としてトレーニングを受けました。

1960年、ニューヨークの58番街と8番街に自分のスタジオを開設しました。彼女のアシスタントとしてRomana KryzanowskaとKathy Grantが長年従事しました。

彼女のスタジオにあったピラティスの器具は、ジョーのスタジオのものとは大きく異なっていましたが、特徴的なペド・オ・プル（T字のバーにスプリングがぶら下がっている器具）があったことは共通していました。二人のスタジオにあったペド・オ・プルは、自転車のサドルのような椅子が取り付けられていて高さを調整することができました。

ニューヨークの高級百貨店、バーグドルフ・グッドマンの社長であるアイラ・ネイマルクは、キャロラに百貨店内に小さなスタジオを開設することを提唱したようです。ちょうど、ジョーがヘンリ・ベンデルに構えた小さなスタジオのようなイメージだったでしょう。

しかし、同社はすでに別の指導者であるキャロル・クッシュとエクササイズスタジオを開設する契約を結んでいたため、少し遅すぎたようです。

キャロル・クッシュは、ヨガとダンスの複合的なエクササイズを教えた1970年代のインストラクターでした。バーグドルフ・グッドマン内のスタジオは、機材がないオープンルームだったそうです。

1982年にキャロラは子供向けの本、「Exercise, What It Is, What It Does」を執筆しました。この本はピラティスの紹介として書かれたものではありませんでしたが、子どもたちの興味を引くように彼女が工夫して考えた動きを載せていて、そこにはピラティスのノウハウが垣間見られます。

キャロラ・トリアーは、2000年10月28日にニューヨーク市で、89歳で亡くなりました。

ロバート・フィッツジェラルド（Robert Fitzgerald）

ロバート・フィッツジェラルドは、ジョーからではなく、クララのみからピラティスを学んだダンサーであると考えられています。

ダンサーでありエルダーのキャシー・グラントはキャロラ・トリアーのスタジオで彼に会いました。

彼は1960年代半ばにニューヨークのマンハッタンに、ダンスをする人々向けのスタジオを開きました。また、イギリスでピラティスを広めたアラン・ハードマンに最初にピラティスを教えたティーチャーでもあります。

見習い時代にこのスタジオに住んでいたハードマンが言うには、ロバートは非常にのんびりした男で、髪が長く常にロシア製のタバコを吸っていて、２匹の大きな犬を飼っていたそうです。そしてマーサ・グラハムを含む多くのダンサーを顧客としていました。